信濃町診療所 矢吹 大輔院長 (信濃町) インタビュー
信濃町駅の改札を出てすぐ目の前のビルにあるのは、お父様から引き継いだという信濃町診療所。スタッフの方が笑顔で迎えてくれる院内にはスペイン語の表記もたくさんあり、多くの外国人の支えとなっていることがわかる。矢吹先生はメキシコの医学部を卒業していることもあり、日本でも数少ない、スペイン語対応可能なドクターだ。
「時間をかけてでも患者さんと向き合う」という姿勢からは、診療に対する誠実さが伝わってくる。地域医療に根差したプライマリ・ケアを信条として多くの患者さんを支えている矢吹先生に、メキシコ留学のお話からプライマリ・ケアを重視するに至った経緯など、さまざまなお話を伺った。
矢吹 大輔院長インタビュードクターになられたきっかけを教えてください
父が医者だったというのが大きな理由ですね。もともと中目黒方面で開業していましたが、父の友人のつながりでこの信濃町に移転しました。その頃から父の診療所に出入りしていましたが、父からはっきりと「継いでほしい」と言われた記憶はありません。それでも物心つく頃には「自分も医者になるのかな」と思っていました。私は長男なので、今思えば自然な流れだったのかもしれません。
お父様もメキシコ留学の経験があるのでしょうか?
いいえ、父に留学の経験はありません。しかし父は一時期船医をしており、船に乗って世界各国を回っていたそうです。その血を継いでいるのが影響したかはわかりませんが、私も海外に抵抗がなかったのでメキシコ留学をしたのかもしれません。今では私の娘も、私同様メキシコに留学しています。父の代からそういった家系なんだと思います(笑)。
日本とメキシコの医療は異なりますか?
メキシコは、基本的にはアメリカの医療をベースとしています。教える内容もカリキュアラムもアメリカと同じ。実習もアメリカと同じで、1年生の頃から実習に行きます。学期ごとに実習先を振り分けられ、そこでいろいろな手伝いをします。向こうには軍の病院があり、そこに当たったら大変(笑)!交通事故や銃撃による負傷者など、ひっきりなしに患者さんが来ますから、本当に寝る暇もないぐらいです。
メキシコでは、卒業して1年間の研修期間を終えたあと、更に1年半ボランティアをするんです。ボランティアの期間はもちろん無給。どうやらそれも「日本人や外国人はお金を持っているでしょ」という考え方のようです。とはいえ、メキシコ人のボランティアドクターも、ガソリン代の足しになるかぐらいの手当だけだったみたいですけどね。幸い、私が行っていた頃は物価が日本の1/5くらいでしたから、仕送りだけでなんとか凌いでいました。
先生の専門分野を教えてください
私の専門は泌尿器科です。ただ、父の代から内科・皮膚科・泌尿器科の3つを標榜して診療しており、その分野も診ることができるようしっかり勉強をしています。診療科目が複数ですから、いろいろな患者さんがいらっしゃいます。この辺りはオフィスビルがたくさんあり、比較的若い男性の患者さんが多いです。すぐ目の前に慶応の大学病院があるため、入院患者の付き添いをしていた家族の方が風邪を引いて当院に来ることもあります。
プライマリ・ケアを大切にする理由は何でしょうか?
私の出身大学の教育方針は「家庭医」を育てるというものでした。もちろん専門医として活躍するドクターもいますが、一般的な疾患を診ることのできるドクターを多く輩出しています。そういった教育を受けてきましたので、私はそれが普通だと思っていました。
日本へ戻ってきて父の診療を見ていたら「風邪を引いて来たけれど、最近肌に湿疹ができて困っているから診てほしい」というような患者さんも多くいらっしゃる。患者さんからすればありがたいことですよね?ついでに相談もできるんですから。そういった現実を目にしましたし、そういう教育を受けてきたので、今でもそれを信条としています。
患者さんへの説明や接し方など気をつけていることはありますか?
患者さんの訴えを詳しく聞くことを大切にしています。「いつから」なのか「どんな痛み」なのかなど、事細かに聞き出すことが大事だと思っています。聞き出さなければ、現状を把握して的確な対処ができないためです。
しかし、そういったことを重視すると、どうしても1人にかける時間が長くなり、患者さんの多い日には1時間以上待たせてしまうこともあります。かといって、ヒアリングや説明を切り上げてササッと終わらせてしまっては大学病院と変わりません。これでは患者さんにとって意味がないですからね。クリニックはそういったことに時間を割けるのが良い点だと思っています。ここだけは外すことなく、これからも続けていきたいです。
スペイン語にも対応しているとのことですが、中南米の方の患者さんも多いのでしょうか?
もちろんいらっしゃいます。都内にお住まいの方が多いですが、埼玉などからいらっしゃる場合もあります。多くの方が日本語を話すことができますが、やはり痛みや悩みの細かいニュアンスを日本語で伝えるのは難しいようで、そういったときにスペイン語で話せると安心するようです。
中南米の方同士のつながりは強く、そういったところからの口コミで当院を知る機会も多いようです。昔から来ている患者さんに「みんなに教えるから名刺をください」と言われ、一束渡すこともありました(笑)。スペイン語を話せるドクターは少ないと思います。日本に来て、しっかりとした安心できる医療を受けるためにも、スペイン語対応の医院があることを知ってほしいです。
医師でよかったと思うときはありますか?
これはもう、患者さんの「すっかりよくなりました」という声に尽きます。私は単純ですから、その言葉だけで『明日も頑張ろう!』って(笑)。商売をしている人はみんな同じかもしれませんが、感謝されることで喜びを感じるでしょう?レストランなら「おいしかったよ」と言われたらうれしい。そのために日々頑張っているわけですからね。
今後の展望などをお聞かせください
基本的には、地元の患者さんのために役立つクリニックであり続けたいと思っています。あとは、この辺りはビジネス街なので、クリニックが夕方に閉まってしまうとなかなか来院できないですよね。当院は、火曜日のみ診療時間を延長して20時まで診療しています。なかなかクリニックに来ることが難しい方にこそ、仕事帰りにでも寄ってほしいと思っています。当院が地域医療に役立つために、学会や勉強会にも積極的に参加して患者さんに還元していきたいです。
院長プロフィール<経歴>
メキシコ合衆国 グアダラハラ自治大学医学部卒
1988年 メキシコ合衆国医師免許取得
1988年 メキシコ合衆国ハリスコ州コロトラン市
地域医療センター内科・産婦人科・泌尿器科
1997年 東邦大学医療センター大森病院
第一外科 臨床研修
1999年 東邦大学医療センター大橋病院 泌尿器科入局
<資格>
日本人間ドック学会認定医
日本医師会認定産業医
<所属学会>
日本泌尿器科学会
日本性感染症学会認定医
信濃町診療所 アクセスマップ
住所 | 東京都新宿区信濃町34 トーシン信濃町駅前ビル3F |
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電話番号 | 03-3359-5147 |
アクセス | JR総武線「信濃町駅」徒歩1分 |
診療科目 | 一般内科・泌尿器科・皮膚科・性病科・健康診断 |
診療時間 | 9:00~13:00/15:00~18:00(火曜は20時まで) |
休診日 | 金曜、土曜、日曜午後、祝祭日 |
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