医療法人社団双壽會 秋津医院 秋津 壽男院長 (戸越銀座) インタビュー

「下町の一次医療を担う総合内科医。医療にかける信念とは」 秋津医院 秋津 壽男院長
多数のメディアにご出演の経験がある秋津先生。書籍も複数出版され、名前を知っている方も多いのではないだろうか。医師としてのあり方を追求した結果、大学病院や専門病院のような二次医療機関ではなく、一次医療を担う現在の総合内科に行き着いたという。

「日中は人の2倍働いて、休みは人の3倍遊ぶ」という秋津先生は「患者さんの負担を少しでも減らしたい」という思いからいち早く経鼻内視鏡を導入し、開院以来、戸越銀座という下町で地域のホームドクターとして活躍している。そんな秋津先生に良いクリニック選びのポイントや、医療業界全体についてなど、幅広くお話を伺った。

秋津 壽男院長 インタビュー先生の本(あさ出版「長生きするのはどっち?」 著:秋津壽男)を拝見しました。二次医療や三次医療についてかなりわかりやすい解説がありましたが、そもそもなぜ秋津先生は一時医療を選択したのでしょうか。
なぜ秋津先生は一時医療を選択したのでしょうか。そうですね。まず医師は、国家試験合格後、学会に入っていなくても専門医でなくても、どんな科目を行ってもよいことになっています。要するに、どの診療科目もできて当然ということです。
しかしながら、二次医療や三次医療の各分野のスペシャリストが揃っている大学病院などでは、各スペシャリストが「脳外科の手術しかしません」というのもよいと思います。だって、眼科の先生に脳の手術はしてもらいたくないですよね。

ただ、一般クリニックで内科の看板を掲げている以上、どんな症状でも「知らない」とは言えないのです。そこを極めていくと、一次医療で何でも精通した一般内科、いわゆる総合内科医やイギリスではGP(ジェネラルプラクシャン)と呼ばれる人たちが医師としてのあるべき姿だと思い、ここに行き着きました。

それをこの書籍の中で解説していたんですね
イギリスなどの海外では、いきなり大学病院に行っても診療はしてくれません。各地域に総合医がいて、そのドクターがエリアを管轄しています。まずは総合医のもとへ行き、その総合医がどの病院へ紹介するかを判断するという制度がしっかりと確立され、一次医療として機能しています。ただこの制度の欠点は、患者さんが決まった医療機関へ行かざるを得ないという点です。

あさ出版「長生きするのはどっち?」 著:秋津壽男それに対して日本は、誰でも大学病院へ行って診察を受けることが可能です。日本の医師には招応義務があるため、本来であれば夜中のどんな時間にくる患者さんも見なければならないことになっています。いわゆる"コンビニ医療"になりすぎているところがあり、海外と日本では極端です。

近年導入されたオバマケア(米国における医療保険制度改革)では、保険料は支払うのにカバーされている部分が少なく「あなたの保険ではここまでしか治療できません」「ここからは自費でなければ診ることができません」といったことが多々あるようです。そうすると「病院にかかりたくてもかかれない」という事態となってしまいます。

先生の書籍でも「TPPで医療の欧米化がされてくる」と記載がありました。仮に医療の欧米化が進むとどうなると思いますか?
仮に医療の欧米化が進むとどうなると思いますか?TPPが進んで問題となってくるのは、薬の特許と混合診療の問題だと思います。
まず、薬の特許が変わろうとしていますね。日本では薬1錠の値段も厚生労働省が決めています。それに対して欧米は、製薬会社が値段を設定できます。その高額な医薬品を保険対象とするか否かは、各保険会社のプラン次第となってしまいます。「あなたの保険プランではこの薬は保険対象ですが、こちらの薬は保険対象外です」といった形です。こういった背景もあり、海外では医療費の問題が少ないのです。

次に混合診療についてですが、この理念自体は正しいと思います。保険対象外の良い薬があるのに、それを使用したために入院のベッド代まで保険適応外となるのはおかしいでしょう。しかし一番の懸念点は、混合診療の制度自体を悪用されることです。
たとえば新薬が出た際「この薬は保険適用外です。お金のある人だけ使ってください。」となってしまうと、医療の平等はなされません。血圧の薬など、一般的なものまでそのようにされてしまってはダメだと思いますね。

日本は本当に理想的な医療制度が整っていると思います。日本は本当に理想的な医療制度が整っていると思います。しかし、熱が出たという患者さんが「昨日ゴルフに行って疲れたから、今日の診療のついでに湿布もください」といっても対応しなければいけないこともあり、医療費の使い方を間違っていると感じます。こういったことが続くと、仕組み自体を変えざるを得ないかもしれません。救急車を有料にするとか、保険適用外の薬を増やすとか。
そうならないためにも、患者さん自身が一次医療や二次医療を使い分け「医療は安くて当たり前」という昔の考えを変えてほしいと思います。昔よりは制度が見直されてきましたが、まだまだ難しいところですね。

秋津先生は会社員を経て医師を選択したそうですが、なぜ最終的に医師という職を選んだのですか?
昔の医学部は、9割が「医者の子ども」、残りは「成績がいいから入った人たち」だったんです。そのため「医師を本気で志してくる人は少ない。そんなところに行きたくない」そう思っていました。でも社会に出てみると、適当な人や悪意を持っている医師なんていないし、激務と言われる大学病院の先生でも、患者さんと真摯に向き合う真面目で勤勉な人ばかりだとイメージが変わりました。

それに、医師の仕事は「感謝され」さらに「尊敬され」そしてお金をもらえる仕事だと思ったからです。もちろんほかにもそういった職業はありますが、医師は健康や命に関わる最たるものです。次第にそう考えるようになり「医師なりたい」と思いました。でも「やるからには何でもできなければいけない」と思い、一次医療を担う今の状況に行き着いたわけです。

医師の仕事は「感謝され」さらに「尊敬され」そしてお金をもらえる仕事だと思った

先生はいち早く経鼻内視鏡を導入したそうですね。周りが消極的な中で導入しようと思ったキッカケは何だったのでしょうか?
私は、ポリープの切除など「治療」のための内視鏡は苦しくても仕方がないと思っています。でも、検査のためのスクリーニングで苦しいのを積極的にやろうと思う人はいないですよね。だからこそ、少しでも患者さんの負担が少なく、楽なものにしたいと考えていました。

現在は性能もかなり改善されてきましたが、私が経鼻内視鏡を導入した当時は、従来のものと比較して画像が鮮明ではないなど反対意見も多かったです。私は、たとえ画質が少し落ちても患者さんの負担が少ない楽なスクリーニングを行い、怪しい場合は大学病院など二次医療機関へ紹介するといった形の診療方法がよいと考え、導入を決めました。

大腸カメラも、経験者ならわかると思いますが、カメラは苦しいし事前に下剤を服用するし、前処置も大変ですよね。スクリーニング検査としてもっと楽に検査ができるようになれば、きっと受診率も高まり、病巣の早期発見で命を救える可能性も高くなると思っています。

クリニックを見分けるポイントを教えてください
まず基本は、スタッフがしっかりしていれば医師もしっかりしていると思います。あいさつがしっかりしているか、患者さんそっちのけでスタッフ同士がずっとおしゃべりしていないかなどをよく見てください。そして、診察までの流れがスマートかどうかも重要です。診療までの流れが悪かったり、スタッフの無駄な私語を黙認していたりするルーズな院長先生は、診療に関してもルーズなのではないかと感じますね。あとは、トイレの清潔さも重要です。トイレ掃除はみんなやりたくないものです。一番嫌がるところの掃除が行き届いているということは、ほかの部分もしっかり清潔に保たれていると思います。

院内写真入り口

ドクターに関して言えば「病名をしっかり教えてくるかどうか」も重要です。他医院に通院していた患者さんが私のもとにいらっしゃることもありますが「以前のドクターにはどのような病名だと診断されましたか?」と質問すると「病名はわかりません」とおっしゃる患者さんがたくさんいます。患者さんはただ熱を下げたいのではなく「何の熱なのか」を知りたい、それをきちんと伝える必要があります。

医師は神様ではないため、一発で病名の診断はできません。しかし「今のところリウマチの可能性は低いから神経痛の可能性が高いです。経過を見ましょう。長引くようであれば検査してみましょう。」とか「現時点では〇〇と✕✕の可能性があります。」と伝えるだけでも患者さんは安心すると思います。

病院は病気を解明するところであって、ただ処方箋を出すだけではダメだと思っています。しっかりと所見を説明することが大事ですが、患者さんが多いと一人の患者さんをないがしろにしがちになってしまいます。医師としてはここが難しいところですが、病名を知るのは患者さんの権利です。自分が納得するまで色々と聞いてみてください。

日々の仕事でかなり多忙だと思いますが、オンとオフの切り替えはどうされているのですか?
私は残業がキライなんです。膨大な仕事量に追われている人もいるので一概には言えませんが、残業する人は「仕事が遅い人」という考え方です。そのため私は、時間内に人の2倍働き、オフのときは人の3倍遊ぶ、休日に仕事を持ち込まないことを徹底しています。だから今回の取材も、診療後でなくお昼休みの時間なんですよ(笑)。

オンとオフをはっきりさせる分、日中の仕事時間はかなり集中されているのですね
無駄な時間を過ごすことはしたくないそうですね。とにかく無駄な時間を過ごすことはしたくないと思っています。

患者さんも、30分待って診療時間が3分でも、不安が解消すれば「よい時間」だったのではないかと思います。逆に、待ち時間なしで30分の診療時間をとっても、不安が解消しなければ「よい時間」とは言えません。そのためには医療以外のネタも重要になったりするんですよ。

たとえば、喉奥の横に大きな水ぶくれができたという患者さんが過去に数名いらしたことがあります。「飲み物もしみるし、何か悪いものなのでしょうか」と。そこである質問をしてみました。「昨日小籠包食べてない?」そうすると患者さんは「あ!食べました!熱くて熱くて...」「そう、それは喉のやけどの可能性が高いです。だから今のところ心配はありません。2~3日して回復しなければまたいらしてください。」なんていうやり取りもあります(笑)。医療以外のネタを仕入れるのも大事にしながら、日々生活しています。

季節柄、インフルエンザや風邪が流行ると思いますが、読者ができる予防法や対策について教えてください
風邪の初期症状は、微熱や軽度頭痛などです。市販の薬を服用して頑張ってしまう人が多いですが、無理をせずに「サボって、食って、寝る」これが大事です。体調を崩すということは、体からSOSが発信されている状態。仕事を頑張り過ぎないとか、残業をせずにすぐに帰るとか、やり方は人それぞれですが、初期症状の段階でしっかり休めばこじらせることは少ないです。本当にシンプルですが、体調がすぐれないと思った方は早めに休養をとってください。

院長プロフィール秋津 壽男院長<経歴>
1954年 和歌山県生まれ
1977年 大阪大学工学部を卒業後、会社勤務
1986年 和歌山県立医科大学卒業
      同大循環器内科に入局
      心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ
1998年 戸越銀座(東京都品川区)に秋津医院を開業

<資格等>
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本医師会公認スポーツドクター
日本体育協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門医

秋津医院 基本情報

住所 東京都品川区戸越3-1-2 イマールビル2F
アクセス 戸越駅A3出口から徒歩約1分
戸越銀座駅出口1出口から徒歩約2分
戸越公園駅出口2出口から徒歩約10分
電話番号 0120-374199
03-5749-2062
診療科目 内科・循環器科・消化器科・アレルギー科・小児科
診療時間 9:00~12:30/15:00~18:30(木・土曜は午前中のみ)
※月曜のみ午前の診察は12:00まで午後は通常どおりの診察です。
休診日 日曜日・祭日

患者さんの声(口コミ・評判)現在、患者さんの声(口コミ・評判)はまだありません。