京都大学、iPS細胞によるパーキンソン病治療で成果 ー 安全性と効果を確認
パーキンソン病に対する革新的な治療法の開発が進んでいます。京都大学の研究チームが進めている、iPS細胞を活用した再生医療の臨床試験で、安全性と有効性の両方が確認されたと発表されました。今回の成果は、将来的な実用化へ向けた大きな一歩とされています。
新しい治療法の内容と治験結果この治療法では、iPS細胞から生成されたドーパミン産生神経細胞を患者の脳に移植し、運動機能の回復を目指します。対象となったのは、50代から60代の男女7名。1人あたり500万〜1000万個の細胞が脳内に移植されました。
治療後の2年間にわたる観察の結果、深刻な副作用は確認されず、移植された細胞がドーパミンを生成している様子も検出されました。運動機能の評価では、6人中4人に明らかな改善が見られたといいます。
製薬企業による申請へこの治験には、大阪に本社を置く住友ファーマも協力。得られたデータをもとに、今後、国に対して治療法の製造および販売の許可を申請する方針です。
研究を率いた高橋淳教授は、「細胞移植によって症状が改善したのは研究者としても画期的なこと。一日でも早く患者に治療を届けたい」と語っています。
患者や家族の声京都市で活動するパーキンソン病の患者支援団体では、iPS細胞を用いた新たな選択肢に大きな関心が寄せられています。
ある患者の妻(66歳)は「夫が長年苦しんできたので、この治療法が出てきたことは家族にとって希望」とコメント。一方、75歳の男性患者は「期待は大きいが、すべての患者が受けられるのかが気がかり」と懸念も示しました。
専門家の見解順天堂大学の服部信孝特任教授は、「この治療が確立されれば、服薬回数の削減や生活の質の向上につながる可能性がある」と評価しています。ただし、「すべての患者に同じ効果が出るわけではなく、より多くの症例による検証が必要」とも指摘しました。
詳細な評価指標と今後の展望運動機能の評価には国際的な尺度が用いられ、症状の改善度が数値で示されました。中には32ポイントの改善があった患者もおり、「重症」から「中等症」に改善したケースも確認されています。
ただし、2名は軽度の悪化が見られたものの、これは一般的な薬物治療による推移と同程度とのことです。
研究チームは、特に若年で症状の進行が比較的軽い患者に対して、この治療法が適している可能性があるとしています。
高橋教授は、「どのような患者にどれだけの細胞を投与するのが最も効果的か、今後の段階的な検討が必要」と述べ、最終的には薬に頼らない治療の実現を目指すとしています。